これは「あの世」のおはなし。
この世で亡くなり
またこの世に誕生しようとする魂達が集う場所。
そこは眩しい光で溢れ、朝露に濡れた赤いバラのような良い香りがふんわり漂っていました。
まんなかには神さまがいらして、小さな子供たちが楽しそうにのびのび遊んでいます。
時に子供達は「ねぇ、今度はどんなママの元に生まれたい?きれいなママ?やさしいママ?」
などと、これから出会うであろう理想のママを想像して楽しそうにしています。
しかし、そこからず〜っと離れた木の下で、一日中泣いている女性がいました。
女性の名前はまゆ。
まゆの服はボロボロでなぜか彼女のあたりだけ薄暗く、空気も冷たく感じました。
まゆはシクシク泣いたり
時に嗚咽したりそんなことを繰り返しながらとにかくずっと泣いています。
泣きすぎて肌は艶を失い、目は涙に溶けて消えてしまいそうです。
そんなまゆに気づいたささちゃんという小さな子供がいました。
ささちゃんは神さまに聞きました。
「神さま、あの女の人はなぜずっと泣いているの?」
神様は視線をまゆに向けながら「まゆは自分の子供を殺してしまったのだ。それを悔いてずっと泣いている。」と。
「なぜ?すごく優しそうな人なのに」
神さまは、ささちゃんと目線を合わせるようにかがむと、優しい声で「ささはそろそろ旅立ちだろう。準備をするがいい」といいます。
「神さま、ささは、あの人の子供として生まれたい。良いでしょう?」
ささちゃんがいうと、神さまはピクッと目を大きくされて「まゆは自分で自分を許してないからまだ旅立てない。ささのママにはなれない」と話されました。
「あの人はあとどれくらいここにいるの?」
「まゆが自分を許したら。
光を求めて、私の元へきたら旅立てる」
気づくとわたあめのようなふわふわの雲がゆっくり近づいてきて、「旅立ちの子たち、来てくださ〜い。誰をママにするかは決めましたか〜?
そろそろその時ですよ〜」と声がしました。
ささちゃんも、その時が来たようです。
さぁと神さまがささちゃんを促すとささちゃんは神さまに
「神さま、あの人の子供になることはあきらめます。でも必ずあちらで会わせてください。
あの人が今度は絶対泣かないように、一緒にいてあげたいから。あの人は絶対すてきな人だから。」
そう言って、ふわふわの雲の方へ走っていきました。
神さまはささちゃんを見送りながら、「まゆ、聞こえたか?
ささはおまえが殺した子供だ。
おまえが暴行されてみごもり、首を締めて殺した子供。
おまえはその罪の重さに耐えかねて自殺した。
ささはまたおまえを選んだ。向こうで待っているそうだよ」
いくら神さまでも、光を選ばない者を無理やり光の中へ連れてくることはできません。
神さまはまゆが泣き止むことを願いながらしばらくまゆを見続けていました。
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