妙恭帖 第十六帖
「『ひとりで頑張らなきゃ』という鎖」
Hおばさんは、何でも完璧にこなす人でした。
何人もの生徒を音楽大学へ合格させるほどの
ピアノ教室を営みながら、
自分の子どもたちの勉強にも付き合い、
同居していたおばあちゃんの面倒も見ていました。
たまに遊びに行くと、
栄養のバランスが考えられた料理が
美しく盛りつけられ、
食卓に並んでいました。
おばあちゃんは、時々こう話していました。
「H子は毎日、昼寝もしないで、
愚痴ひとつこぼさず頑張っているんだよ」
昼寝どころか、
夜はちゃんと眠っているのだろうか。
そう心配になるほど、
Hおばさんは、
ひとりで何役もこなしていました。
でも、
愚痴を言わないからといって、
苦しくなかったのでしょうか。
何でもできるように見える人が、
何もつらくないとは限りません。
Hおばさんの心にも、もしかしたら、
「弱音を吐いてはいけない」
「人に頼ってはいけない」
「ひとりで頑張らなきゃ」
という鎖があったのかもしれません。
神さまは、
私たちを、ひとりきりで生きるようには
造っておられません。
誰かに助けてもらうこと。
誰かを助けること。
その両方を通して、
魂は育っていくのだと思います。
本当にHおばさんを縛っていたのは、
目の前の困難ではなく、
「ひとりで頑張らなきゃ」
という鎖だったのかもしれません。
今日のタロットは、
「隠者」です。
隠者は、
ひとりで歩く人物として描かれています。
けれど、その手には
暗闇を照らす灯火があります。
私はこの灯火を、
神さまの導きだと感じています。
隠者は、
「ひとりで頑張りなさい」
と教えているのではありません。
「神さまの光を頼りに、
一歩ずつ歩みなさい」
と教えてくれるカードなのです。
タロットは、
未来を当てるだけの道具ではありません。
タロットは神さまが、
私たちの魂を自由にするために
与えてくださったバイブルです。
隠者のカードは、
孤独を勧めているのではなく、
暗闇の中にも光はあることを
教えてくれています。
「助けてください」
そのひと言が言えたとき、
魂を縛っていた鎖が、
ひとつ、ほどけていきます。
あなたは最近、
誰かに「助けて」と言えましたか。
もし言えなかったのなら、
それは強さではなく、
「ひとりで頑張らなきゃ」
という鎖に、
まだ心が縛られているからかもしれません。


















